前項で挙げた数々の資格のなかから、まずはJGTOツアーメンバーとJPGAのTP・TCPについてご紹介します。そのためには日本におけるプロゴルファーの定義について理解を深める必要があるでしょう。回り道になりますが、今回はJGTOとJPGAという両機関についてご説明します。

プロゴルファーの定義

プロゴルファーと聞いて私たちがイメージするのはどんな人々でしょうか。
サッカーや野球ではプロ選手=『プロチームに所属している選手』ですが、ゴルフにおいて『プロゴルフツアーに参加している選手』は狭義のプロゴルファーといえます。

1999年以前まで、日本におけるプロゴルフツアーの主催や資格認定作業を扱っていたのは日本プロゴルフ協会(JPGA)です。プロゴルフツアーに参加するにはJPGAが発行するトーナメントプロ(TP)の試験に合格してTPの資格を得る必要がありました。同じように、ゴルフの指導者になるためにはティーチングプロ(TCP)の試験を受験します。プロゴルファーとはJPGAが発行するTPとTCPの資格保持者を指していたのです。

しかし、JPGAは1999年にJGTOとJPGAとに分裂しました。

JGTOとJPGA

※JGTOがJPGAから独立したというより実状を考えると『分裂した』という表現の方が適しているでしょう。

以降は現在まで、日本で開催されるプロゴルフツアーはJGTOが主催しています。
一方のJPGAは日本プロゴルフ選手権の主催と、従来通りのTPとTCPの資格発行・そのほかゴルフ普及事業を担っています。

なお、女子に関しては分裂せず上手く共存し、現在も試合運営と資格発行とをLPGAが行っています。

プロゴルフツアーに参加するために必要な資格

JGTOの主催するプロゴルフツアーには、JPGAが発行しているTPのみ保持していても参加できません。JPGAが発行しているTPを取得して出場できるプロの試合はPGAが主催している日本プロゴルフ選手権のみです。逆に、TPを保持していなくてもJGTOが認めたツアープレーヤーであればプロゴルフツアーに参加することが出来ます。

JGTOツアープレーヤーの肩書は、これまたJGTOが主催するクオリファイングトーナメント(QT)を突破したメンバーに付与されます。
サイトの主旨から脱線してしまうのでざっくりと説明すると、QTとは『来季のプロゴルフトーナメントの出場資格を得るためのトーナメント』です。QTは上位勝ち上がりのシステムで1stから3rd、ファイナルまで実施され、勝ち抜いたメンバーが来季のプロゴルフツアーの出場権(シード権)を獲得出来ます。
現在プロゴルフツアーに参加している選手であっても、一定の成績(賞金額)を納められなければシード権は消失し、来季はQTから受験する必要があります。

一年に一度行われるQTでは1stQTに約300名がエントリーします。そして2ndQTには昨年度に1stQTを突破した選手と3rdQTで敗退した選手らあわせておよそ1,000名が凌ぎを削ります。更にファイナルへと進出するとその年にシード権を喪失した選手らも参戦するのです。最終的に来季のプロゴルフツアーへの参加を許されるのは上位20名ほどです。
このように狭義のプロゴルファーへの道は非常に険しいです。QTはまさに死闘といえます。

PGAが発行するTPの意義

前述の通り、日本で開催されるプロゴルフツアーにはTPの資格は必要がありません。しかし現実には多くの現役ツアープレーヤがTPを保持しています。
なぜわざわざTPを取得するのでしょうか。

これにはQTの仕組みを振り返る必要があります。

たとえQTを勝ち上がりJGTOツアーメンバーになったとしても、成績を落とせばシード権は剥奪されてしまいます。あるいはQT2ndを突破して得られるツアーメンバーの肩書も、次回のQTに参加しなければ消失してしまい、来季は単なる『ゴルフが上手いただの人』になってしまうのです。

一方でPGAが発行するTPはいったん取得すれば年会費を支払い続けることで維持出来ます。
たとえツアーで活躍出来なくてもTPという『プロゴルファー』の肩書があればレッスンプロとして働けます。喰いっぱぐれることはまずありません。
また、PGA会員(TP・TCP)になればアメリカやオーストラリアなど全世界のゴルフ場をプロ料金でラウンドすることができます。たとえば通常ならば1ラウンド10,000円ほどかかるところを約3,000円で回れることもあります。資格取得のコストや維持費を将来的には充分に回収出来ると考えて取得する人もいるのです。

さて、私はこの項で『プロゴルフツアー(レギュラーツアー)に参加している選手』=『狭義のプロゴルファー』と表しました。ですが、JPGA側からすると『JPGAの発行しているTP・TCPを持っていない人は’プロ’ゴルファーとは認定しづらい』面があります。

実際に、最近は『TPを取得せずにツアーで活躍する若手選手』が少なくありません。これではPGAが面子を保てませんから、例外として『ツアーで大活躍した選手』にPGAがTPを与える場合があります。石川遼プロや薗田峻輔プロはこれに当たります。

このようにJGTOとJPGAはなかなか複雑な関係にあります。
みなさんはこの仕組みについてどう思われますか?

今回はJGTOとJPGAについてご説明しました。
次回はJGTOとPGAの肩書を持った指導者のコーチングスキルについて分析していきます。